「得意分野の1点集中」に舵を切る制作会社
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2017.09.07
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2017.09.07
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メタフェイズの折本です。
長らく続けてきた受託制作事業のマネジメントを離れて、1年ほど前から社内スタートアップを始めました。
まず第一弾として、制作会社とクライアント企業のマッチングプラットフォームの事業を専任しています。
最近、そのスタートアップサービスのユーザインタビューとして、事業会社のマーケティング部門の方々と情報交換して来ました。その中で制作会社の在り方を考えるきっかけになったお話が聞けたので、ご紹介します。
今回お話をしたみなさんは数年前からおつきあいのある方々ですが、急速に「デジタル分野への本気度が上がってきている」という印象を受けました。
理論や概念の話だけではなく、制作技術のことにも精通していて、私も知らない情報を逆に教えていただくことも。受託側とクライアント企業側の知識の壁はどんどん低くなっていると改めて感じました。
色々な話を伺った中でも特に印象的だったのが、
「どの制作会社に何を相談すれば良いか、わかってきた。」
という某マーケティング部長さんの言葉。
デジタル分野に詳しくなることで制作会社の特徴もわかり、「Webサイトは、まるっとこの会社にお任せ」ということはしなくなったそうです。
自社で課題整理や施策検討ができるようになったので、ソーシャルメディアでの施策が強い会社、UI設計が得意な会社、キャンペーン運用に長けた会社といった具合に特徴を見極めて発注をしていました。
その背景にはマーケティング部門の「組織」の変化があるようです。
偶然にも各社共通で以下の取り組みを始めていました。
・デジタルマーケティングの専任部署を設立した。
・デジタルマーケティング部門のキャリア採用をしている。
・外部セミナーやワークショップに積極的に参加している(義務付けている企業もありました)。
・アクセス解析を社内業務に組み込んだ。
マーケティング部署の業務の一部としての「デジタル」ではなく、
独立したチームとしてスペシャリスト育成に乗り出しています。
各社同じタイミングで同じような動きを見せていることには驚きました。
どうしてこのタイミングでクライアントの組織が変わってきたのか。みなさん異口同音にお話してくれたのは「マーケッターとしての感覚値と消費者の行動のズレ」に危機感があるということでした。
「店頭で接触したら、検索してくれるだろう。」
「クチコミサイトを重視してくれるだろう。」
といった今までの定石が裏切られることが多く、ユーザーの行動を予測することが難しくなっている。一方でお付き合いのあるエージェンシーや制作会社に相談してもなかなか明確な回答が得られない。
そんな背景から、デジタルのスペシャリスト化は今後カスタマーを理解していく上で避けては通れないことと感じたそうです。
デジタルに詳しくないクライアント担当者にとっては「すべてをお任せください、あらゆる課題に対応します」というのは魅力的です。
制作会社としてもあらゆるニーズに応えられるリソースを整えて、クライアント企業のデジタルを全て請け負うというのは1つの成功パターンでした。
しかし、デジタルに本気を出したクライアントは自社でしっかり分析して、課題を見極められるようになってきます。自ずとプロジェクトの舵取りをするようになってくるはずです。
そんなクライアントと相対する制作会社もまた変化の岐路に立たされているのではないかと。
やはり明確な「得意分野」を打ち出すこと、やるべき分野と捨てるべき分野の取捨選択をすることが必要だと感じます。
実際のところ、メディアのタイプや技術分野の裾野が拡大する中で、「Web制作のフルサービス」を掲げることはかなり難しくなっています。一掴みの大手制作会社を除いては、あらゆる分野に精通することはできなくなっているはずです。
全てを任せてもらうのではなく、あるタイプのプロジェクトやある特定の技術分野であれば、どこにも負けないノウハウを提供する。そうすることで「ピンポイントで選ばれる会社になる」というのが重要です。
・BtoBのメディア戦略の成功事例を多く持っている。
・ECのUI設計に強い。
・Buzzキャンペーンの企画が得意。
・コンテンツ編集力が高い。
など、マーケティングレイヤーでもクリエイティブレイヤーでも他にはない特別な何かを提供できるかどうか、制作会社のサービス設計とPRはますます重要な局面になってきました。
ただし、理屈はそうであっても変化すること、差別化戦略に向かうことは簡単ではありません。
新しく立ち上がる制作会社であればコンセプトを明確にして、特化したサービス設計、組織設計をすることは難しくないのかもしれません。ですが、既存のWebインテグレーターが差別化を打ち立てることは走っている車のエンジンを直すようなもの。
組織設計、リソース構成をそう簡単に変えることはできません。また支えてくれる既存顧客に対しても「明日からサービス内容が変わります。このプロジェクトは対応できません。」とはいきません。
そもそも「その差別化」が企業規模を支えるポテンシャルがあるかどうか、リスクの高い判断を迫られます。
差別化は重要とわかっていながらも、フットワークは重くなる。
ジレンマから簡単には抜け出せないというのが本音です。
まずは全体最適を前提にせず、差別化に向けた小規模なチャレンジを繰り返していくしかないのかもしれません。
影響範囲の少ないユニットを組織して、そこでノウハウを作っていくことが、そのやり方のひとつです。
そのためには社内で各々がチャレンジできる環境、柔軟性の高い組織編成にして行くことが大切ですね。
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