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BtoB向けECサイト|構築方法や実例をご紹介

BtoBのECサイトとは?

BtoB(Business to Business)ECの概要から触れていきます。
簡潔に言うと、ECは電子商取引(electronic commerce)の略称です。従って、BtoB-ECは企業同士の電子取引を指します。
BtoB-ECの主な形態としては何が考えられるでしょうか?今回は、EDIとECサイトの2種類にフォーカスして解説します。

■ ECサイト
1990年代後半、アスクル(以前はプラス)やMonotaRO(かつての住商グレンジャー)などにより、法人向け製品をネット上で提供するBtoB専用のECサイトが出現しました。これまでの伝統的な企業取引が、これらのサイトのおかげで劇的に進化し、その後のBtoB-ECサイトは多岐にわたる形で展開されてきました。

BtoBのECサイトと、BtoC ECとの違い

BtoB ECとBtoC ECの差は、主要な顧客が法人か一般消費者かという基本的な点です。その他にも特徴がありますので、以下で解説します。

■ 取引のボリュームと金額
BtoBとBtoCの間の取引のボリュームと金額の差は明らかです。会社の用品や生産資材の購入と、個人の日常のショッピングを比較してみればわかりやすいでしょう。
BtoCは個別購入や少額取引が主流ですが、BtoBは大口注文や高価な取引が一般的です。

■ 価格設定
BtoBでは取引の状況や量によって価格が変わることが一般的です。BtoB ECの運営においては、各取引先やその条件に応じて価格の設定を行い、ウェブサイト上での表示価格もそれに応じて変更する必要があります。

■ 購入プロセス
BtoC ECは購入意向があるとすぐに注文・決済が行われるのに対し、BtoB ECは売主の見積もりをもとに購入者が検討し、適切であれば注文します。このため、BtoBの購入プロセスは複雑です。

■ 販売チャネル
BtoC ECでは登録されている全ユーザーが商品を見て・購入することができます。一方、BtoB ECでは取引先の条件に応じて、商品の閲覧や購入が制限されることがあります。

■ 支払い手続き
BtoC ECでの支払いは、クレジットカードやコンビニ支払い、代引きなどの前払いが主流です。一方、BtoB ECの場合は、既に受け取った商品やサービスに対して翌月にまとめて請求される後払いが多いです。この後払いは、過去の取引や信用を基にして行われます。

BtoB EC市場は拡大中

2023年8月、経済産業省の公開データ(日本の電子商取引の状況)によれば、BtoB EC市場は2023年で420兆円に達しています。2020年は334兆円、2021年は372兆円で、前年比12.8%の増加、2020年から見ると25.4%の伸びとなり、急激な拡大が見受けられます。さらに、ECの採用率は過去最高の37.5%で、2020年の33.5%から大きく上昇しています。
業界や分野ごとに見ると、卸売が最大の112兆円の市場を持ち、次いで製造業の輸送機器部門が58兆円です。ECの採用率で最も高いのは輸送機器の76.7%、その次に食品の70.7%です。製造業全般でECの採用率は高めで、最も低い産業機器関連でも42.0%と、BtoB ECの利用が拡がっていることが明らかです。

BtoB EC市場の6つの成長要因

BtoB ECの市場は継続的な拡大を見せています。その背後にある主な要因を6つ挙げて考察します。

  • 働き方の進化
  • IT基盤の発展
  • デバイスの浸透
  • BCPの意識の高まり
  • DXの進行
  • EC採用率のアップ

働き方の進化
2016年から「働き方の進化」が提案され、企業は長時間労働を減少させ、生産性を向上させる必要があります。BtoB ECはこの問題の解決策の1つとして採用されました。
日本の生産性はG7内で最下位。特にBtoB取引は先進国としての無駄が多いと認識されています。
従来の電話やFAXによる業務手段は効率的でないとの指摘があり、即時の改善が求められています。

IT基盤の発展
日本全土でITインフラが充実していますが、多くのBtoB企業はアナログ手法を維持しています。
インターネットやデジタルデバイスは日常生活で一般的ですが、業務では紙や直接のコミュニケーションが重視されている場面もあります。このギャップが市場拡大の要因の1つです。

デバイスの浸透
スマートフォンやタブレットなどのデバイスの増加はBtoB EC市場の成長を後押ししています。
従来の大手企業は専用のシステム構築に多額の投資が必要でしたが、最近は一般的なデバイスでも利用できるシステムが出現しています。
高額なシステムやデバイスの導入は不要で、モバイルデバイスやクラウドサービスを用いてBtoB ECを実現できる環境が整っています。

BCPの意識の高まり
近年の感染症の拡大や資材の高騰など、多くの企業が影響を受けています。さらに、自然災害も頻発しています。
これらはグローバル化や気候変動と関連していると見られます。これらの問題は継続的に存在するため、予め対策を立てる必要があります。BtoB ECは、場所や時間に縛られず、クラウド上でデータを保管できるので、BCPに適しています。

DXの進行
DXは現在、すべての企業での重要な課題となっています。
DXは、ITツールの活用でデジタル化を推進し、業務プロセスや企業の文化を変革することを指します。日本のDX取り組みは2018年の経済産業省のガイドライン公表を契機に進展しています。
各業種でのDXの動きが加速しており、卸売や製造業の日常的な業務も、BtoB ECの導入を含むデジタル化が進められています。

EC採用率のアップ
様々な業種でECの採用が増加していることが、「令和3年度デジタル取引環境整備事業報告書」からも明らかです。競合や取引先のBtoB ECの利用増加に伴い、企業は「遅れを取りたくない」と「取引先の要望に応えたい」として、採用が進んでいます。

BtoB ECサイトの構築方法4点

BtoB ECサイトの設計には「ASP方式」「パッケージ方式」「クラウド方式」「フルスクラッチ方式」の4種類が存在し、それぞれの能力や価格設定は異なる。各方式の特長や良し悪しを理解し、企業の要求や目的に応じた手法を選択し、サイト設計を行ってください。

ASP方式
ASP方式は、クラウドに基づくサービスを用いた設計法。ECサイト向けの主要な機能が整備され、デザインのテンプレートも利用できるので、簡単に且つ数万円でECサイトが構築可能。セットアップ時間は短縮でき、アップデートやセキュリティはサプライヤーが担当、これが便利です。
一方、他の手法と比較してカスタマイズの幅が狭く、拡張性が低い。使用するクラウドサービスに沿ってECサイトを作るため、独自性を重視する場合、不適合と感じることも。

パッケージ方式
パッケージ方式は、ECサイト向けの基本機能を備え、カスタマイズで補完する設計法。既存の機能をベースに、企業ニーズに合わせてカスタマイズが可能。
欠点としては、システムの自動更新がなく、3~5年で古くなるリスクがある。旧式のシステムは更新が必要で、その度にコストが発生。提供するサプライヤーにより、基本機能やカスタマイズの範囲が異なるので、適合性を確認する必要がある。

クラウド方式
クラウド方式では、クラウドの基盤上でECサイトを設計。システムは常に最新で、拡張やフルカスタマイズも適用可能。ASP方式より、独自性の高いECサイトが可能となる。
コストは初期・月次ともにパッケージ方式とほぼ同等だが、システム更新不要のため、長期で考えれば経済的。
だが、ソースコード非公開なので、オープンソース開発を要する企業には適していない。

フルスクラッチ方式
フルスクラッチ方式は、要件に基づき、全てオリジナルでECサイトを設計。他の手法に比べ、開発時間と費用が増加するが、要件に完全対応するECサイトが可能。
短所は、設計後のサイトの修正やセキュリティは企業側での管理が求められること。よって、必要な資金や資源を準備し、計画的に進めることが推奨される。

BtoB ECサイトの主要機能

BtoB ECサイトを立ち上げる際、各サービスには豊富な機能が備わっています。しかし、自社に適した機能を持つサービスの選択が肝心です。ここで、BtoB ECサイトにとって基本的な、6つの機能を解説します。

顧客データ管理機能
BtoBの取引において、商品価格が顧客によって違うことがあるため、顧客毎の商品情報の管理が要求されます。
このため、BtoB ECサイトでは、請求先、与信管理、商品価格設定などを顧客別に取り扱う機能が不可欠です。

取引情報の管理機能
BtoB ECサイトでは、各顧客の取引データを把握する機能も要されます。
顧客ごとの割引率、支払い方法、支払い期限、購入上限額などを管理することで、個別のマーケティング戦略を実行する際に役立ちます。

見積書作成機能
この機能により、見積書や領収書のオート生成が行えます。BtoBのシーンでは、購入前に事前承認が求められることも少なくないので、自動見積生成や保存機能があれば、クライアントの承認プロセスが効率化されます。

購入承認フロー機能
BtoBでの取引では、高額な案件が多く、個別の意向での購入は限られています。そのため、BtoB ECサイトでは、承認フローを柔軟に設定できる機能が必要です。

受注・出荷管理機能

受注及び出荷の追跡機能はBtoB ECサイトにおいて中心的な役割を果たします。この機能を利用すれば、予約注文の段階で在庫の確保や、サプライヤー、生産部、配送部への通知が実現します。さらに、与信管理との連携で、信用限度を越える場合のアラートや注文制限も可能です。

値引き制御機能
多くのBtoB ECサイトで、ボリューム割引、キャンペーン、顧客特有のディスカウントなどが実施されます。顧客ごとのディスカウント策略が異なるので、この管理機能はBtoB ECサイトにとって欠かせません

BtoB ECサイトの運営方法
ECサイトの成功のためには、制作して終わりではなく、運用も同じほど重要となります。運用がおざなりなECサイトは、顧客の信頼を失い、一瞬にして顧客を失ってしまうためです。

運用におけるポイントを5つにまとめて、それぞれ簡潔にご紹介します。

  1. 商品説明の記載
  • 画像掲載は必須
  • 商品の良さだけでなく欠点も記述
  • 購入者に安心感を提供する情報提供が必要
  • 返品や支払い方法などを明確に伝えること
  • 商品の発送時の丁寧な梱包や通知も重要
  1. ECサイトの定期的な更新
  • ページの快適性とサーバーの安定性が求められる
  • 定期的なサーバーメンテナンスと速やかなトラブル対応
  • 商品情報の定期的な更新や新しいコンテンツの掲載
  1. 売り上げ、商品発送管理

顧客が商品購入後、入金確認が取れたら発送を行う流れ
入金確認は迅速に行い、トラブルを防ぐ事がポイントとなります。読むと当たり前に見えますが、お金周りのコミュニケーションは即時対応を行うことが非常に重要となります。

  1. サポート業務
  • 顧客からの問い合わせへの迅速且つ丁寧な対応が必要
  • Web接客ツールの導入を検討して、ユーザーの問題を解決
  1. マーケティング業務
  • 広告やコンテンツ制作、SNS活用などの広報活動
  • サイトのアクセス解析を行い、UI・UX改善を進める

BtoB-ECサイトの運用方法と課題・対応方法

ECサイトは、作成だけではなく、適切な運営が必須です。適切な運営がないと、顧客の信用を損ない、急速に顧客を逸してしまう可能性があります。運営上のキーポイントを5つに分け、それぞれ簡明に説明します。

商品情報の明瞭化

  • 写真は欠かせない
  • 商品の長所だけでなく短所も表記
  • 顧客に安心を与える情報提供が要
  • 返品手続きや支払い方法の明示が大切
  • 商品出荷時のきちんとした梱包や通知は購入者に安心を与えます

ECサイトの継続的更新

  • サイトの速度とサーバの安定が大事
  • サーバの定期メンテと迅速な問題対処
  • 商品データの継続的更新や新コンテンツ追加

売上と商品出荷の管理

  • 商品の購入後、金額が確定したら速やかに出荷
  • 入金確認は早めにして、問題を未然に防ぐことが大事。金銭的な対話は迅速に行うことがキーです。

顧客対応業務

  • 顧客の質問には迅速かつ親切な応答が求められる
  • Web対応ツールを採用し、顧客の問題を即座に解決

プロモーション業務

  • 広告制作やコンテンツ作成、SNS利用などのPR活動
  • サイトの訪問解析を実施し、UI・UXの改良を進める

次にBtoB ECサイトの構築・運用において、一般的な課題と、対応法をご紹介します。

問題点1:独特な業務流れや商慣習がECサイトの設計・更新を難しくする

特にクローズドBtoB型のECサイトは、企業固有の取引や商慣習があり、通常のECサイトとは異なる点が多いです。このため、サイトの構築は時間と費用がかかります。実際、構築コストが数千万円から数億円もかかることも少なくありません。
さらに、使用する得意先や代理店によっても業務フローが異なるため、事前にしっかりと要件を理解することが重要です。しかし、すべてを理解するのは簡単ではありません。
ECサイトの公開までに1年以上かかることもあり、その間に業務フローが変わることも。要件定義の後も、実際にECサイトを使うスタッフとの連携は続けるべきです。

問題点2:業務フローが個人依存で、EC化が難しい

BtoBのECサイトでは、取引先や担当者によって独自の方法やデータが存在することがあります。これらの情報やノウハウが適切に集約されていないと、ECサイトの適用が失敗する可能性が高まります。
そのため、個人依存の業務を整理し、明確にすることが必要です。担当者が協力的でない場合は、業務効率化のメリットを伝え、賛同を得ることが大切です。

問題点3:ECサイトの操作性が低い

先にも触れましたが、販売側の都合だけで設計すると、使いにくいECサイトになり、利用者が離れてしまうことがあります。得意先の意見を取り入れながら、使いやすいサイトを目指すことが重要です。

問題点4:基幹システムとの連携に高コストと労力が必要

大手BtoB事業者は、ECサイトと基幹システムを連動させる必要があります。しかし、どの機能をどちらのシステムで持つべきか、データのやり取りはどうするべきかなど、多くの判断が求められます。基幹システムの改修は高コストなので、ECサイト側での調整が賢明でしょう。

問題点5:新システムへの適応を拒む社員が存在

既存のシステムに慣れている社員や経験豊富な社員の中には、新しいシステムに抵抗感を持つことも。新システムを受け入れるためには、営業部門との意識統一やリーダーの指導が不可欠です。

ECサイトの集客数を伸ばすためのポイント

集客を向上させるには、新しい取り組みとともに、サイトの活用方法も鍵となります。次の5つのキーポイントに注意を払って実践してみましょう。
顧客増加を実現するには、新規の戦略とサイトの使い方が重要です。以下の5つの要点を考慮し、取り入れてみてください。

明確なターゲット設定

ターゲットが明確でないと、集客の効率が良くありません。たとえば、10~20代女性向けの化粧品を売る場合、Facebookの宣伝は適さないかもしれません。ターゲットの調査には、実店舗のデータや、ネットのレビューやSNSの投稿を利用します。

大手BtoB ECプラットフォームも並行して利用

自社ECサイトのみならず、Amazonや楽天などの主要ECモールの活用で、集客範囲を拡大することができます。ただし、モールの利益を自社サイトの向上のために再投資する考えが理想です。
これらの要点を基に、集客方針を再構築することで、多くの顧客をサイトに引き寄せることができるでしょう。

口コミの促進

良い口コミは、集客の強力な手段です。お客様に特別なクーポンやサービスを提供し、フィードバックを得る努力を増やします。しかし、基盤としては優れた商品やサービスが不可欠です。

ECサイトの内容の豊富さ

ECサイトでの販売でも、商品の詳細や活用法を伝えることで、購入意向を引き上げます。単なる商品リストよりも、詳細な情報が提供されることで、購入を考える人々を引きつけることができます。

実店舗の活用

実店舗が存在する場合、オムニチャネルのアプローチは有効です。ECサイトと店舗でのポイントの共有や、オンライン注文後の店舗での受け取りなどが、顧客の満足度を向上させます。



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